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3月1日から14日まで、東大寺二月堂にて行われる、
お水取りこと「修二会(しゅにえ)」。
2週間に渡る本行では、いろいろな方法で観音に懺悔が行われるが、
懺悔とは別に付加儀礼として、
「過去帳(かこちょう)」「神名帳(しんめいちょう)」というものがある。

「過去帳」は、3月5日と12日に読まれるもので、
東大寺創建や復興に大きく貢献した人、縁の深かった人の名前が読まれる。
それは、聖武天皇に始まり、藤原不比等、行基や鑑真和上に空海、
源頼朝、重源、快慶、德川家康などそうそうたるメンバーが名を連ねるが、
意外な名前というか、不気味なエピソードとして知られるのが、
「青衣(しょうえ)の女人」である。
鎌倉時代の修二会の際、過去帳を読み上げていた錬行衆の前に、
青い服を着た女性がどこからともなく現れ、
「何故わたしを読み落としたのか?」と恨めしく問われ、

驚いた錬行衆は、咄嗟に「青衣の女人」と読んでしまったのだという。
読み上げると青衣の女人の姿は消えてしまったといい、にわかには信じられない話だが、
事実それ以降の過去帳にはその「青衣の女人」がカウントされてしまって、
現在でも、過去帳の際には名前が読まれるのだ。



修二会中の二月堂内陣は女人禁制なので、本来女性がいるはずがないのだが、
これほどストイックな修二会で事実読まれるわけであるから、
なにかしら発端となる出来事はあったのであろう。
ちなみに、過去帳にはなにも歴史上の大物ばかりではなく、
大仏造営に関わった人々全員(260万人)も職人として読まれるのも重要なところである。
しばしば、日本の古代を考える時、奴隷制度があったように語る人がいるが、
奴隷であれば過去帳に記載されることはないであろう。

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一方「神名帳」とは、修二会に際し全国の神々を二月堂に呼ぶための、
いわば出席簿のようなもので、9段に分かれ13700ほどの神々の名前が記されると言う。
最初に読まれるのは、「金峯大菩薩(きんぷだいぼさつ)」で、
一番手が吉野山の神?とは興味深いが、これは大仏造立の際、
良弁が金峯山で祈り金を求めたが、金峯大菩薩(蔵王権現)が現れ、
「金峯山の金は弥勒菩薩が下生した際に大地に敷く金である、
代わりに近江の石山で祈るといい」と進言があり、
その後、陸奥の国(東北)から金が出た
ことの言い伝えによる。
いわば、東大寺にとって最も重要な神であるということである。
2番手は「八幡三所大菩薩」で、これは二月堂近くの手向山八幡の御祭神である。
その後、多くの神が呼ばれていくわけだが、有名なのが、
若狭の国からやってくる「遠敷明神(おにゅうみょうじん)」である。
魚釣りをしていて修二会に遅刻し、それが「お水取り」へもつながるわけだが、
コラム40「お水取りの謎」
もう勘の鋭い方ならお気づきかと思われるが、
修二会と神名帳の流れは、完全に神仏習合である。
要は、国家的な祭祀であり仏教儀式でもある「修二会」を守護するために、
日本の神々が招集されているのである。
そしてまた、文句を言わずにやってくるところが日本の神らしいw

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現在であれば、せんとくんも呼ばれているのかもしれない。

■過去帳、神名帳スケジュール
3月1日 神名帳21:30~
3月2日 神名帳20:30~
3月3日 神名帳20:30~
3月4日 神名帳20:30~
3月5日 神名帳20:30~ 過去帳22:00~
3月6日 神名帳20:30~
3月7日 神名帳20:30~
3月8日 神名帳20:30~
3月9日 神名帳20:30~
3月10日 神名帳20:30~
3月11日 神名帳20:30~
3月12日 神名帳21:30~ 過去帳22:00~
3月13日 神名帳20:50~
3月14日 


関連記事:
コラム129「不退の行法(ふたいのぎょうほう)修二会」
コラム108「達陀帽いただかせ」
コラム74「お松明の謎」
コラム1「新説せんとくん」

参考サイト:
お水取りの神名帳/1番が蔵王権現という理由がやっと分かった!(tetsudaブログ)
お水取り、過去帳のこと(ちょっと奈良まで行ってきます2)
神名帳第一段の大菩薩(ちょっと奈良まで行ってきます2)

画像元サイト:
二月堂の石段(ゆんフリー写真素材集)
鳥居のある道(ゆんフリー写真素材集)