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今上天皇陛下の譲位が、2019年4月30日で決定したと発表された。
現在の皇太子殿下は5月1日で天皇に即位し、元号も改められる。
譲位は、江戸時代(1817年)の光格天皇以来200年ぶりということで、
まさに歴史的な出来事に感慨深い人も多いことであろうと思う。
ちなみに、マスコミは放送法により皇族に対する特別な敬称を使えないことになっているので、
「生前退位」など歴史的に存在しない造語が日々飛び交うが、
正式には天皇が位を譲るなどすることを「譲位(じょうい)」という。
日本は、明治から昭和にかけて大きく体制が変わったので、
単純に古代から続く天皇という存在だけでは済まない諸問題などあるようだが、
天皇の譲位は、歴史的にみればそれほど珍しいことではない。
過去125代の天皇のうち、半数近い天皇が譲位によって皇位継承を行っているが、
男性の天皇で初めて譲位を行ったのが、第45代「聖武天皇」である。

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「聖武天皇」といえば、あの東大寺の大仏を作った天皇といえば知らない人はいないであろう。
聖武天皇は24歳で即位後、度重なる国難(災害、飢饉、疫病)に見舞われ、
そのある意味での究極の解決法が東大寺の大仏であった言うことができると思うが、
大仏の完成間近、天平勝宝元年(749年)に聖武天皇は譲位し、
娘の阿倍内親王が「孝謙天皇」となった。
「続日本紀」によると、「元正天皇から皇位を受け、恐れ多くも天皇としての務めを果たしてきたが、
万機が数多く重なって、体がそれに応えることができないので、子に皇位を譲る」
というような詔が出ており、どこか今上陛下と重なるような気がするのは考え過ぎであろうか。
飛鳥時代から行われた譲位は皇極、持統、元明、元正天皇はすべて女性で、
譲位は皇位継承問題を回避するための処置で行われたと考えられている。
それ以前の古代の天皇は、崩御後、男系男子があとを継ぐ形で天皇へと即位してきた。
聖武天皇も皇子(息子)に皇位を譲りたかったであろうが、
「基親王」「安積親王」ともに幼くして亡くなっていた。
また、聖武天皇の譲位は意図したものではなく、独断で出家してしまったせいで、
朝廷が後から手続きしたような説もあるようであるが、真意の程はわからない。
しかし、なにせこの聖武天皇からでも日本の天皇の歴史は1300年あるわけである。
今現在の我々は、その延長線上の歴史の節目に立とうとしているわけであるが、
はたして今の日本人にそれを受け止めるだけの知識や理解が備わっているのであろうか・・・。

参考文献サイト:
奈良の大仏を作った聖武天皇が不幸すぎて涙(武将ジャパン)
譲位(Wikipedia)
聖武天皇(Wikipedia)
続日本紀(中) 全現代語訳 (講談社学術文庫)