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笠置寺は、笠置山標高288mにある寺院で、古くからの巨岩信仰の行場として、
また飛鳥時代から鎌倉時代にかけての歴史の舞台ともなってきた場所である。
所在地は京都府相楽郡笠置町であるが、
修二会(お水取り)発祥の地としても有名で、奈良から近いこともあって、
実質奈良の観光地の1つといっても差し支えはない(震え声)
開祖は、実際のところはよくわからないそうであるが、
笠置山の巨岩の前から弥生時代の有樋式石剣が発見されることから、
2000年の歴史を遡ることにもなろうかといわれている。
一般的に、歴史書などに登場するのは飛鳥時代以降からであり、
「今昔物語集」では、天智天皇の皇子である大友皇子が、
鹿狩りでこの地を訪れ立ち往生したとき、馬が断崖絶壁で立ち往生し、
山の神に、「もし助けてくれるなら、この地に弥勒仏を彫りましょう」と祈ると助かった。
大友皇子は、再度この地にくるために目印に自分の笠を置いていったことから、
この地の地名の起こりになっていると伝えるという。

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寺までは、直前の駐車場を目指せば迷うことはないが、
割と狭い道をあがっていくことになるので、対向車の離合には注意しながら登りたい。
山門をくぐり境内に入ると、拝観料を払う受付がある(大人300円)。
その先が、この寺では「行場めぐり」となっており、
ある意味では巨岩が並ぶ行場が境内であり本堂ということもできるであろう。
拝観料を払わず素通りにしてしまう人も多いのか、
行場入り口では、「拝観料をお払いください」と自動で音声が流れるハイテクさも見逃せない。

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入り口すぐにあったのが、この「笠やん」という猫の石像。
今から20数年前、境内を案内してくれるノラ猫がいて、
マスコミにも紹介されるなどして話題になったそうだ。
石像は2017年に作られたもので、
名物猫「笠やん」在りし日の姿、石像に 京都・笠置寺(京都新聞)
現在は、村のPRキャラクター。ゆるキャラにもなっている。
笠やん | 笠置町PRキャラクター | Official WEB
京都の寺の人気猫「笠やん」 22年後に復活にゃ~
笠やんの写真は、境内に未だ貼ってあったりして、地元の人に愛されていたのが伺える。
私は、このけなげな笠やんの話を知って愛おしくてたまらないw
きっと仏の化身の猫にあったに違いない。

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こちらが笠置寺の本尊である弥勒の磨崖仏である。
この磨崖仏を写したのが、室生の大野寺の磨崖仏だというのは有名な話。
ほぼ線画は消え確認することはできないが、岩のデカさといい凄い迫力である。
笠置山はご覧のとおり、弥勒信仰があった場所で、
弥勒といえば兜率天(とそつてん)である。
釈迦入滅後、弟子であった弥勒は釈迦の代わりになるため、
兜率天にいき修行をすることになる。
しかし、兜率天では1日が人間の世界では400年になり、
この世に帰ってくるのは56億7000万年後
気が遠くなる数字であるが、弥勒信仰が盛んになるのは末法思想の平安時代、
未来のない、まさに絶望の末法の世に未来仏である弥勒にすがったというわけである。
ともかく、笠置山はその兜率天とつながっていたみたいで、
修二会を始めた実忠が、この笠置山で見た兜率天での行法を、
この世に伝えて再現しようとしたのが、東大寺の修二会(お水取り)だというのだ。

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笠置寺の行場巡りは、足の悪いお年寄りなどには無理であろうが、
健脚な人であれば、おそらく日本一手軽に行場体験が出来る場所であろう。
全行程に30分かかるかどうかといった感じであろう。
途中、かなり狭い岩の間を抜ける胎内くぐりもあるので、
巨漢の人には厳しいかもしれないw
以前、この人間には少し辛い行場めぐりを、笠やんは軽々と案内してくれたのであろう。

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後醍醐天皇は、行幸のふりをしてこの笠置山の地にやってき、
討幕の兵をあげ笠置山で籠城した。
幕府軍からの奇襲に備え、準備されていたのがこの「ゆるぎ石」であるそうだが、
結局は使われず、笠置山は陥落。後醍醐天皇は隠岐の島に流される。
「ゆるぎ石」というのは、押せば動く石ということでそう呼ばれるそうだが、
私が押した限りではビクともしなかったw

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行場の一番高いところぐらいからの景色。木津川が見えている。
私が訪れた時には、天候もよくて最高であった。
行場めぐりと聞いて、はじめは体力的に心配であったが、
文科系の私でも十分に可能だったのでw、ぜひおすすめしたい。
最後に、駐車場にあった看板。
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いつ、だれが、なぜ・・・・Σ(゚Д゚;)


■笠置寺
住所【京都府相楽郡笠置町笠置山29】
電話番号【0743-95-2848】
拝観料金【大人300円 中学まで100円 団体(30名以上)270円】
駐車場【あり】
HP【http://www.kasagidera.or.jp/

参考文献サイト:
笠置寺(Wikipedia)
太平記〈上〉―マンガ日本の古典〈18〉 (中公文庫)
笠置寺案内しおり